第一話
まるで曇りガラスを拭くように、さっと瞬きをする。
あそこはなんて遠い世界だろう。
震える自分の指先を他人のものの様に感じながら、目の前のモニターにそっと手を伸ばす。自分の手なのにとても重い。
硬く冷たいモニターに音も無く触れたが、しかし、指先の感覚は酷く曖昧だった。
ふと次の瞬間、自分の右手はデスクの上に、左手は頬杖をついていることに気付く。
ああ。自分と自分の間に、半音階分のズレ。 モニターに触れるどころか、手を伸ばしてすらいなかったのである。
モニターに写る"彼ら"から目を離せないまま、随分と長い間、スチール製の無愛想な椅子に腰を下ろしたままだった。何か考えようとしても、何も考えられない。ただなんとなく、悲しいような淋しいような、薄い膜のような孤独感だけ。
その孤独感は、ガラスをじとじとと曇らせた。...




